【春の色彩美】季節の草花の色をファッションで楽しんでみよう

まさに三寒四温のこの季節は、冬のコートをまだ着るかどうか迷ったりします。そして何を着ればいいのか、よくわからなくなります。そこで参考にしたいのが平安時代の配色美です(これ秋にもやりました)
平安朝の貴人たちにとって、カラーコーディネート術は出世や結婚を左右するほどの必須技術でした。平安中期くらいにいわゆる十二単スタイルが女性のファッションとして確立され、以降はどんな色の着物を重ねるか、着物の裏地をどんな色にするか、などに王朝人たちは心血を注ぐようになります。このような着物の配色の組み合わせを色目(いろめ)と呼ばれるものです。
遣唐使が廃止されてからは、着物の色目に季節の草花の名前が当てられるようになりました。こうして日本独自の色彩美が磨かれていったのです。たとえば、春はこんな感じ。

図版は一枚衣の表と裏の配色を示す重ねを示しています。
資料『かさねの色目』長崎盛輝(シーグ社出版株式会社)

これは袷(あわせ・裏地がある着物)の表と裏の配色例です。表の生地が薄いと裏地の色が透けて見えてオシャレですね。

「梅」「柳」の配色を今に応用するなら白いブラウスに紅梅色や、柳(薄緑)のボトムとか。
「山吹」の色目(いろめ)。マスタードイエローの薄手ニットやワンピースに緑のボトムや緑の薄手ジャケットやコートとか。
「つつじ」は難易度高そうですね。色のバランス的にはピンク8に緑2くらいがいいのかな。

しかし、このように鋭敏な色彩美の社会では、季節外れな色目(いろめ)の装束は即時にダサいと判断されるので注意が必要だったのです。
清少納言も枕草子の「興ざめするもの」の項目で、「3月、4月に紅梅の衣を着ること」と挙げています。当時、紅梅の衣は11月から2月ごろまでの色目とされていたようです。ちなみに今の感覚では、「まぁまぁ、3月でも梅は咲いてるし‥‥」といいたくなりますが、平安時代は旧暦なので1カ月ほど遅くとらえる必要があります。3月4月は今でいう4月5月くらい。さすがにゴールデンウイーク近くの初夏に、紅梅を着られるとうっとうしいかもしれません。

まとめ
自然の変化に敏感だった‥‥
というより、自然とともに生活していた時代の配色がかさねの色目。
日本古来の配色の美から、自然を感じる心を取り戻したい。

この記事を書いた人

西田 めい

西田めい(にしだめい)
書籍編集者、ライター。大阪の編集プロダクション勤務から2022年4月に独立。
古事記、百人一首、源氏物語、枕草子、平家物語、奥の細道など、多数の古典関連書籍の編集、執筆を担当し、古典のおもしろさに目覚めました。柳田國男検定・初級合格(こんな検定あるんですよ、笑)。趣味はベランダガーデニング。
大学時代は軽音楽部だったので音楽が好きです。
著書に『二十四節気のえほん』(PHP研究所)、『はじめてであう古事記』上下巻(あすなろ書房)があります。お仕事のご依頼、ご相談などございましたら、お問い合わせフォームからお願い致します。